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2022.06.22

金属積層造形の品質管理の必要性【金属3Dプリンター】

3Dプリンター 品質

アディティブ・マニュファクチャリングの品質管理

金属3Dプリンターによる金属積層造形(以下、金属AM)は、レーザーで粉末材料を溶接しながら造形をしていく技術であり、

後工程の検査で品質の検証が十分にはできません。そのため、金属AMは製造プロセスにより品質保証を行う「特殊工程」に該当します。

つまり、「モノを作り出す過程の諸条件が、良品が作れる範囲内で安定していること」が必要です。

品質管理の目的

皆さんが考える品質管理は以下のどちらでしょうか?

供給する製品が、

a) 図面や仕様書通りに出荷品ができているか確認すること

b) 図面や仕様書通りに安定生産できているか確認すること

それぞれについて説明していきます。

a) 図面や仕様書通りに出荷品ができているか確認すること

寸法を例に挙げると、『図面公差内に収まっていれば問題ない』ということです。

公差範囲ギリギリでも問題ないわけですが、これを実証するには100%検査が必要です。

b) 図面や仕様書通りに安定生産できているか確認すること

『図面公差内に収まる工程を確立・維持』するということです。

製品はバラツキを持っています。そのバラツキを小さくすることで、安定(統計的不良予測範囲内)して生産できることになります。

「確立・維持する」ということは、測定値のモニターとそのフィードバックによる工程の改善を行うことです。

品質管理は誰の要求なのか?

先ほどの a) の考えを持っている会社で、良く勘違いされているのが

「品質管理は顧客の要求である」ということです。

顧客は、図面や仕様書通りのものを、「より安く」納入してもらえれば良いのです。

より安く提供するために、全数検査はできません。

できないが、(限りなく)良品であることを保証する必要がある。

これは供給者の責任であり、品質管理は供給者自身の要求なのです。

ですから、弊社の品質方針の1つは

「品質管理は当社(自ら)の要求によって行い、品質保証を確実なものとし常に顧客満足を追求する。」 としています。

品質管理は誰がする?

なぜ、顧客は我々の品質管理に口出しするのでしょう?

理由は、

● 不良品で自社の生産計画や納期遅れなどを未然に防ぎたい

● 受入検査に時間とコストを掛けたくない

のです。

そこで、「サプライヤは品質管理をしているはず」だから、そこから情報を得ようとします。

また、効率よく確認するために、自社の方法を適用させようと口出しするのです。

顧客はサプライヤ品質を「ウォッチ」しているのであって、「管理」しているのではありません。

統計的品質管理(SPC管理)

限りなく良品であることを保証する=製品のバラツキを推定するために、多くの企業で統計的管理が採用されています。

Cpk(工程能力指数)という指標を簡単に説明すると

Cpk0.67=不良率4.5%   =5/100個の不良

Cpk1.00=0.27%(2,700ppm)=3/1,000個の不良

Cpk1.33=0.0063%(63ppm) =6/100,000個の不良

『100%良品は無理だけど、10万台で6個の不良なら許容する』という考え方です。

航空機部品などは物にもよりますが、最低Cpk1.33以上が必要です。

中には公差レンジの70%で管理することを要求されることもあります。

品質管理の必要性

量産品の製造を受注するということは品質管理(安定生産)ができるということです。

国際標準的なものでなくとも、自社の管理水準を持つ。

これで、初めて顧客と品質保証について議論ができるのです。

自社の製品群にとって、妥当性のある管理目標はどこでしょう?

新規受注の場合、必要な管理基準はどれでしょう?

不良率は低いほうが良いわけですが、母数やコストおよび要求性能を考慮して考えることが現実的です。

終わりに

製造をしている以上、全くの無検査、無管理は有り得ないと思います。

その測定値を、単なる数値でおわらせるか? それともデータとして活用するのかは、我々次第です。

『標準的な管理手法の要求を満たせないからできない』のではなく、検査数量が少なくてもデータ処理してみることが大切だと思います。

安定的な工程をリリースするという概念が根付けば、品質管理は大きなステップアップを迎えます。

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  • 会社情報​ABOUT US

    VISION:AMをものづくりのあたりまえに
    MISSION:AMの実践者であり先導者として、産業化されたAMプロセスを実現する

  • 製品・サービス​SOLUTION

    AM装置の販売からメンテナンス、受託生産、ソリューション開発に至るまで、
    AMに関するさまざまな事業を展開しています。