導入事例

3Dプリンターを“脅威”から“機会”へ
中核の研究拠点で“ならでは材料”“ならでは設計”を追求

2021/04/29

AM装置導入事例

日立金属株式会社様

本記事は、NTTデータエンジニアリングシステムズ 2019年1月発行の『人とシステム』No92掲載記事を再編集したものです。記事内の組織名や役職名等は取材当時の情報です。

 高機能材料メーカーである日立金属株式会社様では、先端材料における中長期的な開発に取り組むコーポレート研究所として『グローバル技術革新センター(GRIT)』を設立。特殊鋼、磁性材料、素形材、電線材料という4つのカンパニー制の事業構造を横断する中核的な研究施設として、積層造形用の新たな金属粉末の開発および金属3Dプリンターのプロセス開発を続けています。“真の開発型企業”を目指す中心機関で、材料開発に活用するためのEOS M 290を中心に、EOSTATE Exposure OT、Simufact Additiveが活躍しています。

GRITのコラボレーションラウンジにて

脅威を機会に変えるための研究開発

GRITが取り組む主要テーマの1つに、金属3Dプリンター向けの新たな金属粉末の開発およびプロセス開発があります。その取り組みについて戦略革新部の主管研究員である大坪靖彦様は「特殊鋼カンパニーの主力製品は金型材料ですから、金属3Dプリンターの出現は金型が置き換わるのではという脅威を感じさせるものでした。しかし、あえて自らの技術を否定する金属3Dプリンターに取り組むことで機会に変えて、市場の変化に対応できると考えました。後発ではあるものの、これまで材料メーカーが踏み込んでいない分野として大きなビジネスチャンスと捉えています」と説明します。
GRIT内には、さまざまな加工機をはじめ、全造形方式の金属3Dプリンター装置が設置されていて、EOS M 290も含まれています。大坪様は「EOSは世界シェアがトップであり信頼性に優れている点が導入の決め手になりました。ソフトウエア関係では、造形データ作成時にEOSPRINTを使うことでスムーズに造形できることも利点の一つです」と評価します。さらに、溶融プロセスを監視するモニタリングシスム「EOSTATEExposure OT」、金属積層造形プロセスシミュレーションソフトウエア「Simufact Additive」を導入。材料開発を中心に、設計や造形まで含んだ幅広い研究が進められています。

日立金属株式会社
グローバル技術革新センター GRIT
戦略革新部 主管研究員
大坪 靖彦 様)
GRIT 3Dオープンラボ

“ならでは材料”“ならでは設計”“ならでは造形”

 現在、金属3Dプリンターの材料開発を行っているメンバーとして、さまざまなバックグラウンドを持った人材が集まり、設計、品質保証、操作、ソリューション化といったそれぞれの立場から、新たな可能性を追求しています。大坪様は、「3Dプリンターならではの材料を提供していくことが材料メーカーとしての使命です。3Dプリンターならではの特長を生かすことを“ならでは材料”“ならでは設計”“ならでは造形”と呼んで、プロセス開発までを含めた研究開発に取り組んでいます」と話します。
 材料開発と造形プロセス開発については、3Dプリンターの材料という新たな金属粉末に加えて造形プロセスの開発も進められており、トータルでのソリューション化を目指しています。
 品質保証の観点では、EOSTATE Exposure OTによるモニタリングで欠陥が出たときの状況を調べて、その原因を探る研究が続けられています。EOSTATE Exposure OTにおける造形の良しあしを判定する機能は、判定基準をユーザーが設定することができます。さまざまな設定を試す中から最適な環境にたどり着くことが可能で、それらの繰り返しが積み重なって実績となっています。
 設計では、Simufact Additiveを利用して変形や残留応力などを予測しフィードバックすることで、設計の段階で不具合をなくす取り組みが進められています。
 大坪様によると「そういう試行錯誤は研究所だからできることです。材料メーカーという強みを生かして、形を造形するだけでなく、製品の特性まで保証したモノづくりをご提案したいと考えています。そういう意味でもEOSTATE Exposure OTやSimufact Additiveは必要なツールです。さらに、お客さまの要請に応えていくためにも、研究員のノウハウを積み重ねながら形にしていきたいと思います」と研究開発としてのスタンスを説明します。
 高機能材料メーカーとして3Dプリンター向け金属材料の研究開発を続ける中で、すでに誕生した金属粉末があります。一つは、5つの元素を均等な割合で含む40μmの金属粉末です。日立製作所の研究開発グループと共同で3Dプリンターによる積層造形に適した金属粉末を開発するとともに、この粉末をレーザー焼結法で積層する造形プロセスの条件を突き止め、ハイエントロピー合金「HiPEACE(R)」の開発に成功しました。この金属粉末は、高い強度、耐食性を備えており、既存のニッケル基合金よりも過酷な環境で用いることができる可能性があります。もう一つが、鍛造で従来使っていた材料を3Dプリンターに適応させた材料で、耐食性の高い特長を持ちます。
 今後について大坪様は、「3Dプリンターの新しい材料を開発するとともに、そのレシピも当社が開発して総合的なソリューションをご提供できればと考えています。量産時には、成功例より失敗例が数多くある方が役に立ちます。研究段階でいかに多くの失敗をして、その挽回方法を用意するかが重要です」と話します。EOS M 290は、日中はもとより夜も週末も無人稼働しているとのこと。そういう厳しい環境の中でも、EOSの3Dプリンターは活躍を続けています。

開発した金属粉末(右上)とEOS M 290による造形物(左下)

EOS M 290の前にて先端材料開発部の皆様
 左から 岡本 晋哉 様、牛 晶 様、青田 欣也 様、大坪 靖彦 様、
 岡本 賢一 様、吉田 恵美子 様、川野 高明 様

会社プロフィール

会社日立金属株式会社
Webサイトhttps://www.hitachi-metals.co.jp/
住所埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地
設立1956年4月10日
資本金26,284百万円(2018年3月末現在)
事業内容特殊鋼製品、磁性材料、素形材製品、電線材料の製造と販売

ソリューション紹介

 研究スタッフからは、教育やサポートの手厚さやマニュアル類の充実に対してもお褒めの言葉をいただいています。さらに、「ゆくゆくは、蓄積したEOSTATE Exposure OTのデータをベースにAIに機械学習させて、どんな場面で欠陥がでるのか分析したい」とのことで、EOSのさらなる活躍が期待されています。

EOS M 290
仕様
造形領域 250mm×250mm×325mm
積層厚※ 0.02mm~0.06mm
レーザータイプ Yb-fiber laser 400W
サイズ
システム 2,500mm×1,300mm×2,190mm
再循環フィルタシステム
プレフィルター 930mm×954mm×1,710mm
ファインフィルター 781mm×818mm×1,448mm
重量 約1,710kg

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