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2025.10.14

金属3Dプリンター EOS M 290 の造形の安定性:前編

 3Dプリンティングでものづくりをする事例が、いくつも見られる時代になりましたが、製造となると許容範囲内の品質で安定した造形ができるかが課題となります。3Dプリンターの個体差や造形位置によって、品質に「ばらつき」が出てしまうのかという点について、世界で最も広く使われているEOS M 290で、EOS社のコンサルティング部門であるAdditive Mindsチームが行った機械的特性の再現性調査を要約してご紹介します。

この調査は、異なるバッチの材料を使用したEOS M 290そのものの能力調査と、異なる場所に設置された3Dプリンターをそれぞれ違うオペレータが操作して造形したテストパーツによる調査で検証されました。
Source ; EOS Aydın Yağmur, Simon Porthun: Machine Capability Study EOS M 290 &EOS Titanium Ti64ELI

EOS M 290と異なるバッチ材料の性能調査

機能解析のための試験体は、引張試験片、密度キューブ、形状精度確認パーツを図1のように配置し3つの異なる材料バッチで、各3回、合計9ジョブの造形を実施しました。
図1.試験片のジョブレイアウト(Source:EOS)
調査に使用する3Dプリンターは、EOS社が定めた設置仕様書に従って適切にセットアップされたEOS M 290です。造形中は温度および湿度が常に運用条件に準拠していることを継続的に確認しました。材料はTi-6Al-4V-ELIを使用し、照射パラメータはTi64 Speed Parameter (積層厚:60μm、造形速度:9㎣/秒)を変更せず使用しました。また、機械的特性の検査は航空宇宙認定の外部研究所で行われています。

密度

密度キューブ144個を、ISO3369に準拠し測定した値の平均値は、図2のように4.41g/㎤、標準偏差は0.0018g/cm³でした。
図2.密度の工程能力(Source:EOS)

引張強度試験

引張試験は、ISO6892、ASTM E8Mに準拠し、熱処理済の試験体288個で実行されました。検査の結果、分布の幅が非常に小さく優れた再現性を示しました。例えば、本実験の引張強度の標準偏差は8.1Mpaでしたが、これは広く製造業で許容されている金属材料の引張強度100Mpaを大きく下回っています。

引張特性のバッチ依存性

粉末のバッチごとに化学組成が異なるため、機械的特性はある程度のばらつきが予測されましたが、平均値の差異は測定の不確かさの範囲内にとどまり、機械的特性は一定でした。

引張特性の方向依存性

熱処理済みの試験体の引張強度の平均値は、造形方向に依存していない事が、垂直引張試験片と水平引張試験片の平均値1040MPaである事で示されました(図3)。
図3.熱処理後の引張試験結果(Source:EOS)

面粗度

面粗度の測定はISO 4287に準拠し、RaとRzについて分析しました。対象の密度キューブはアズビルド(造形したまま)で後処理はエアクリーニングのみの状態です。720回の測定をした結果、全体の平均値と標準偏差は、RaとRzでそれぞれ11.187±1.093μmと73.437±6.119μmであり、どちらの値も仕様範囲内でした。エアクリーニング後、ブラスト処理をすることによってRaを5~9μm、Rzを20~50μmに低減することができます。

EOS M 290の性能について

この調査では、EOS M 290の各機能の総合的なプロセス能力を、量産で目指すべきバラつきの1つの基準である4σで評価しました。この結果、EOS M 290が信頼性と再現性のある部品特性を提供することを示しており、この3Dプリンターが産業用アディティブ・マニュファクチャリング(AM)のベンチマークであることを示しています。

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