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2026.08.03

3Dプリンターの導入で直面する課題とは

 これから新規事業を立ち上げ、3Dプリンターで製造をしようとするとき、どのような課題がそのプロジェクトをストップさせるでしょうか。プロジェクトの担当者が進めたくても進められない要因のいくつかをここでご紹介したいと思います。

造形方式は種類が多い上に特徴がかなり違う

3Dプリンターには現在ASTMによって分類された7種類の造形方式があります。それぞれについては詳しく触れませんが、この7種類の造形方式を「3Dプリンティング」と一括りにするには、造形プロセスも造形物の特徴も非常に大きな違いがあります。これから始動させようとする事業にとって最適な材料と必要な機械的特性を出せる3Dプリンターを選ぶことがポイントになります。
AMプロセス
Powder bed fusion(PBF、粉末床溶融結合法)
Binder jetting(BJT、結合剤噴射法)
Directed energy deposition(DED、指向性エネルギー堆積法)
Material extrusion(MEX、材料押出堆積法)
Sheet lamination(SHL、シート積層法)
Vat photopolymerization(VPP、液槽光重合法)
Material jetting(MJT、材料噴射法)
参考:導入前に検討すべき3Dプリンターの方式の選び方

3Dプリンティングは信頼できるのか?

 ご存じの通り3Dプリンティングは層を積み重ねて造形する技術です。そのため、造形品の強度等に対して不安を持つお客様が多く、新しくこの技術を自社に取り入れようとするお客様から心配の声をいただきます。一層一層積み重ねるその層間はしっかり結合しているのか、精度は機械加工と同じくらいあるのか、表面粗さはどこまで改善できるのかなどです。これらについては、先に述べた3Dプリンティングの造形方式によって特徴が異なるので、何がクリティカルな要求仕様なのかを明確にする必要があります。また、3Dプリンティングは製造技術の一つであり、他の工法と同様にこれ一つで完結するものではありません。他の技術と組み合わせて要求仕様を満たすことが大切です。

3Dプリンターに適した設計

 様々な会社から3Dプリンティングに関するいろいろな事例が出てきていますが、紹介されている多くがトポロジー最適化されています。それらの写真やデモパーツを目の前にして、多くの方が感じるのは、「どう設計すればよいのか」、「この形状が最適であるとどのように説明すればよいのか」、ということです。

CADとは異なるトポロジー最適化ソフトウェアやシミュレーションソフトウェアが数多く販売されているので、ソフトウェアを使えば、最適化形状そのものは生成できますが、いきなり今まで見たことのないぐにゃぐにゃした設計が生成されたなら、その妥当性を評価したり、設計の根拠を説明したりするのは容易ではありません。ただ、3Dプリンターのメリットを最大限に活かそうと思うなら、トポロジー最適化などの考え方を取り入れ従来の設計を見直すことが重要です。実際には、いきなりトポロジー最適化した設計をするわけではなく、まずは既存の設計を見直し、3Dプリンターで製造しやすい形状へと再設計します。そのうえで、トポロジー最適化を適用し、さらなる軽量化や性能を向上させます。

ビジネスモデルと導入コスト

 技術面とは別方向で直面する課題が、ビジネスモデルや導入コストなどビジネス面についてです。産業用3Dプリンターへの投資は高額です。新規ビジネスの立ち上げは言わずもがな、既存パーツへの3Dプリンティング適用でも費用対効果は必ず問われます。しかしながら、今ある製品の設計や機能を変更せずそのまま3Dプリンターで作ろうとすると、費用対効果が合わないことがままあります。また、新規ビジネスにおいては費用対効果の算出が困難なこともあります。

これにはいくつかの要因があると思いますが、一つには、既存の製品は、従来の製造技術において高度に最適化されているという点があげられます。長年の間改善を繰り返した無駄のない生産工程の一部を3Dプリンティングに置き換えても、従来の工法と同様のパフォーマンスを出せるとは限りません。

それでも3Dプリンティングのメリットを享受しようとするなら生産工程が大きく変わります。それは、3Dプリンティングの特徴でもある「設計の自由度」が関わっていると言えます。3Dプリンターのメリットを最大限に活かすために設計変更をすると、複数の部品で作られていた製品を一つの部品に一体成形できたり、三つに分かれていた機能が一つにまとまったりします。その結果、切削工程の役割や工程内の順番に変更が生じるほか、製造工程や検査の内容や回数が減ったり、従来の製造工程になかった後処理が新たに発生したりします。

3Dプリンティングに熟知した人がいれば、これらのことを考慮し、生産工程を再構築し、コスト計算をしたり、新規ビジネスの採算を取るためのシミュレーションができるかもしれませんが、実際のところ、そんなことができる人はほんの一握りです。よく知らない技術のコスト計算をするというのは非常に困難といえるでしょう。

 その他には、何を造形したらビジネスになるのかわからないといった声も聞きます。これについては、各企業の得意分野、目指す方向、市場での立ち位置など、3Dプリンティング技術以外にも企業固有の事情が関わってきます。まず、これらの整理が必要になるでしょう。
樹脂3Dプリンターで造形された手の装具(Source EOS)
金属3Dプリンターで造形されたマニホールド(Source EOS)
3Dプリンティングの造形方式、最適化設計、費用対効果以外にも、課題になるポイントはいくつもあります。品質保証、認証の(再)取得、人材育成などあげればきりがありません。しかもこれらの課題は単体では起きません。複数の要素が絡み合って、プロジェクトをストップさせる課題として立ちはだかります。これらの課題を自社のみで乗り越え、既存技術と同等のレベルまで最適化するのは、人、モノ、金の点においてとても負担の大きいことです。そのような課題を持つ企業と伴走しサポートするようなサービスを利用すると導入が早く、リスクは少なく運用することができるでしょう。
3Dプリンターの導入を考えるときには、3Dプリンターそのものにフォーカスしすぎるのを一休みして、3Dプリンターを導入後、どのように会社を発展させていきたいか、市場の中でどんなポジションになりたいかというところを明確にしてみてはいかがでしょうか。

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