作業の様子

TECH BLOGTECH BLOG

2025.05.26

金属3Dプリンターの稼働に必要な周辺機器

 3Dプリンターを導入し運用するためには、3Dプリンター本体や造形のための3Dデータはもちろんですが、いくつかの周辺機器も必要となります。今回は当社が販売しているPBF方式(Powder Bed Fusion/粉末床溶融結合法)金属3Dプリンター運用のために必要となる周辺機器について、それぞれの役割をご紹介したいと思います。図1は、金属3Dプリンターと周辺機器を配置したレイアウト図のサンプルです。図の番号に沿ってご紹介いたします。
図1.金属3Dプリンター EOS M 290 と周辺機器のレイアウト図

① トランス (変圧器)

3Dプリンターの稼働にはAC400Vの供給電圧が必要であるためトランスを設置し、日本の標準供給電圧であるAC200VからAC400Vに昇圧させます。
図2.トランス

② コンプレッサー (空気圧縮機)

圧縮空気を生成してエアータンクにエアーを供給する装置です。圧縮空気は3Dプリンターのエアー駆動箇所や、窒素ガス発生装置などで使用します。造形時には造形エリアの酸素濃度を下げる必要があるため、コンプレッサーを設置する必要があります。
図3.コンプレッサー

③ エアータンク

コンプレッサーから吐出された圧縮空気を保存し、コンプレッサーの頻繁な稼働を抑える役割があります。また圧縮空気を安定供給し、3Dプリンター内の圧力低下による造形停止を防ぐことが可能です。
図4.エアータンク

④ クリーンエアパッケージ (ノンフロン高品質エアー供給装置)

エアータンクからクリーンエアパッケージを通って、3Dプリンターへ圧縮空気が運ばれます。クリーンエアパッケージでは、エアータンクから供給された圧縮空気中に含まれる油分や、水分、ゴミといった不純物をエレメントフィルターや吸着材を通して分離、除去させています。その後、生成されたクリーンエアは3Dプリンターへ供給されます。
図5.クリーンエアパッケージ

⑤ IPCM(Integrated Process Chain Management、材料リサイクルシステム)

IPCMは材料搬送モジュール、シーブモジュールといった材料をリサイクルするために必要なEOS製の材料リサイクルシステムの総称です。
材料搬送モジュール(図6)は、金属3Dプリンターで造形した後に造形エリアにある未溶融粉末材料を吸引、運搬します。その後シーブモジュール(図7)を使用して、吸引した未溶融粉末材料をふるいにかけ、再利用可能な材料とスパッタなどを含む廃棄すべき材料に分別します。もし1台の3Dプリンターで幾つかの異なる材料を使用する場合は、他の材料が混ざってしまうことを防ぐために、材料毎に本システムをご用意いただくことを推奨しています。
図6.材料搬送モジュール
図7.シーブモジュール

⑥ チラー(冷却水循環装置)

金属3Dプリンターは、金属粉末を溶かすために高出力ファイバーレーザーを使用しています。このレーザーは連続稼働時に大量の熱を発生させるため、安定した温度にレーザーを冷却する必要があります。チラーは、このレーザー光源やレーザー駆動ユニットを冷却し、レーザー出力を安定させるために利用されます。また制御装置や電源系も高負荷で稼働し、発熱することがあります。こうした内部ユニットもチラー経由で冷却することによって3Dプリンターを安定稼働させています。
図8.チラー

⑦ 産業用掃除機

3Dプリンターの清掃に使用します。造形後にIPCMの材料搬送モジュールを使って再利用可能な材料粉末を回収したあと、産業用掃除機で3Dプリンターの内部に残っている粉末やスパッタなど廃棄となる粉末などを回収して廃棄します。
材料となる金属粉末は非常に細かく、空気中に舞いやすいため爆発・引火のリスクがあります。そのため、ここで利用する掃除機は湿式掃除機というもので中に液体が入っています。湿式掃除機を使用して吸引した粉末を液体に取り込むことで、発火・静電気のリスクを抑えながら安全に金属粉末を回収できます。特にアルミニウムやチタンなどの金属粉末は、乾燥した状態で吸引すると静電気による粉塵爆発の危険が高いため、当社では防爆対応の産業用掃除機をご提案しています。
図9.産業用掃除機
以上になりますが、これらの他にも造形後に、造形物に溜まった熱応力を除去するための熱処理炉や、造形物をベースプレートから切り離すためのワイヤーコンターマシン、造形物の表面処理を行うショットブラストなど、その他の周辺機器も必要に応じてご提案させていただきます。
3Dプリンターの導入に関して、ご不明点などございましたらお気軽にお問い合わせください。

会社概要​COMPANY

  • 会社情報​ABOUT US

    VISION:AMをものづくりのあたりまえに
    MISSION:AMの実践者であり先導者として、産業化されたAMプロセスを実現する

  • 製品・サービス​SOLUTION

    AM装置の販売からメンテナンス、受託生産、ソリューション開発に至るまで、
    AMに関するさまざまな事業を展開しています。