前回、金属3Dプリンターの定期点検の概要をご紹介いたしました。
定期点検は機構系と光学系、環境・制御系と内容が分けられますが、今回はEOS M 290の機構系点検の中でも特に重要となるX軸、Z軸関連の点検についてご紹介いたします。
図1. EOS M 290 (Source: EOS)
X軸の点検
X軸の点検としては、リコーティングシステムが対象となります。
リコーティングシステムは、粉末材料を造形エリアに供給する役割を担っています。粉末材料を移動させるリコーターと呼ばれる機構をモーターで左右に動かして、造形エリアに粉末材料を薄く敷き詰めています。
金属積層造形の仕組み
ここでの点検作業としては、リコーティングシステムをひとつひとつ分解して隅々まで清掃を行います。清掃後に、駆動部の滑らかな動きを維持するために調整をしているほか、必要に応じて部品の交換作業を実施しています。
Z軸の点検
Z軸の点検は、コレクタープラットフォーム、材料供給システム、ビルディングプラットフォームの3つが対象です。これらの機構はモーターで駆動されており、各機構には繊細な動きを制御するためのセンサーが搭載されています。
Z軸の点検では、これら3つの機構のモーターとセンサーが正常に動いているか、正しく接続ができているかの確認をします。X軸同様に内部の分解・清掃を行い、破損の有無を確認・調整し、必要に応じて部品を交換します。
さらに造形エリアが水平になっているかの位置調整も行います。これは3Dプリンターが正常に作動するために不可欠な調整であり、機構系の点検作業のなかで最も重要な作業と言えます。具体的には以下のような調整を行っています。
① 3Dプリンター自体が傾いていないか、水平を確認、調整
② 3Dプリンターに対して、ビルディングプラットフォームの水平を確認、調整
③ ビルディングプラットフォームに対して、リコーティングシステムが平行になるよう調整
④ ビルディングプラットフォームのレベリング機能の動作確認、可動域の調整
以上が機構系の点検で行っている主な作業になります。継続して定期点検を行うことで、安定した運用を維持することができます。たとえば、機構系の一部で正常に作動していない箇所があれば、エラーが発生し造形中に停止する可能性があります。また、問題を放置すると大きな故障につながる恐れもがあり、修理のために高額な費用が発生する可能性があります。
当社では定期点検を行うことで、お客様が3Dプリンターを長期間にわたって安定した運用ができるように導入後のサポート体制を整えています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。