アディティブ・マニュファクチャリングの世界
AM四方山話もこれが最終号となります。
そう、私もここで仕事に一区切りつけることになります。
ラピッドプロトタイプから始まってラピッドマニュファクチャリング、アディティブマニュファクチャリングへと変遷してきた3Dプリンタに関わった30年ですが、順調な人生の足を引っ張ったのが3Dプリンタ、クモの糸のように救ってくれたのも3Dプリンタでした。
今この技術を使って製造した部品がレースやロケットの性能向上に貢献しているのを見ると感慨深いものがあります。
一時の3Dプリンタブームが落ち着いた後、徐々にではありますが着実に3Dプリンタを使ったモノづくりが浸透しているような気がします。
特に金属積層造形においては、造形の難しさを克服した高性能な部品の種類も増えつつありうれしい限りです。
では今後、3Dプリンタ業界の行く末はどうなのでしょうか?
個人的な独断と偏見で考えてみました。
金属造形
強度、耐久性、精度、微細構造、複雑形状、内部を含めた品質等を要求される高機能部品はやはりPBF(粉末床溶融結合、パウダーベッド方式)が優位でしょう。
しかし、装置がどれだけ売れるか?というと即ち
3Dプリンタが機械加工より優位となる高機能部品で勝負する企業がどれだけあるか?ということであり、
そんなに大きなマーケットにはならないのではないかと推察します。
おそらく少数の企業にたくさんの機械が入る、あるいは高度な造形技術を持ったサービスビューローに
機械と造形依頼が集中するのではないでしょうか?
金属でさえあればいいというような部品には、PBF以外の方式の3Dプリンタが優位になるかもしれません。
ポリマー(樹脂)造形
今日現在、ポリマー造形でPBF方式の3Dプリンタの販売台数はそんなに多くはないですが、
将来的にはこの分野が一番の伸びしろがあるのではないかと期待するところです。
金型が不要で射出成型と同等の製品をつくることが出来て量産性もそこそこある。
サイズを自由に変えられて、デザインも自由に変えられて、一品一品サイズもデザインも違う製品を一回のジョブで大量につくることができる。
着色も自由にできる。この利点をもっと真剣に考えるべきだと思います。
材料に制約はありますが、その材料で対応できるマーケットは小さくはないと思います。
今後、3Dプリンタの世界がどのように進化していくのか?
引き続き興味を持って見ていきたいと思います。
17回に渡るAM四方山話をご愛読いただきありがとうございました。
著者紹介
略歴
1952年 大阪生まれ
1977年 大阪府立大学大学院工学研究科船舶工学 修士課程修了
1978年 日立造船情報システム(株)入社
1991年 海外事業部部長
1993年 独EOS社と積層造形装置の日本国内における独占販売契約締結。
以後、EOS社の積層造形装置の事業推進に従事し、現在に至る。
2021年 2月1日現在
(株)NTTデータ ザムテクノロジーズ ソリューション統括部 技術部