作業の様子

製品活用事例CASE STUDY

2021.01.12

Conflux Technology 様

EOS M 290 とEOS Aluminium AlSi10Mg を利用した積層造形

産業用3D プリントを利用した次世代型の熱交換器技術

Conflux Technology 社は、積層造形(AM)でのみ製作可能な幾何学的形状による性能をもった、高効率で小型の熱交換器設計により特許を取得している。
単位体積あたりの表面積を増加させながら、最適化した流体経路と3D 表面特性を組み合わせることで、高い熱交換性能をもち、軽量で、圧力低下の小さい熱交換器が完成した。
このような優れた性能は、数値流体力学によるモデリングと、積層造形のノウハウを活用した形状設計に支えられた、短期の開発スケジュールで実現した。
生産設備に関する細かな指定を必要とせず、異なる改良型の同時製造が可能である。

3Dプリンターで製造した熱交換器①
Cross-section of the 3D printed Conflux CoreTM Heat Exchanger (Source: EOS)

課題

熱交換は、熱力学第一法則が提示する普遍的な課題だ。
熱交換器とは端的に言えば、2 つ以上の流体(普通は、液体・液体、液体・気体、気体・気体の組み合わせか、または複数の流体の組み合わせ)の
あいだで効率的に熱のやり取りを行うための装置である。これはエアコンや自動車エンジンのような製品で利用されており、エネルギー回収において実用性を発揮する。他にもたくさんの応用例があり、熱交換器は幅広い応用が可能な複雑な技術だ。
熱交換器の設計・製造方法は、現在主流となっている技術で発展する一方で、結果的にこうした技術の制約を受けてきたという面もある。
Conflux Technology 社の創業者でCEO でもあるMichael Fuller は、10 年以上も自動車レース業界のエンジニアを務めてきた。
3Dプリンターで製造した熱交換器①
この業界では、過酷な条件下でも作動する熱交換器が必要だ。
それゆえ、従来の製品よりも小型で効率的な部品が求められるが、除去製造法には限界があった。
Michael Fuller は、3D プリントのもつ短時間の変形技術に目をつけ、結果的に、次世代型の熱交換器を生み出す技術として積層造形を見いだしたのである。そして、単位体積あたりの表面積が従来は到達できなかった水準にまで増加した非常に複雑な幾何学的形状の設計にすることで、強力な熱交換性能が実現できるようになった。加えて、装置の体積を無駄のない大きさに絞ることもできる。
こうした部品は、レーシングカーや航空機の軽量化など、将来の製品開発に劇的な効果をもたらすと思われる。
このような根本的な変化をもたらす可能性は、機能の統合と、異なる改良型の同時製造が実現すれば、より大きなものになる。
Michael Fuller は3D プリント技術を用いることで、この着想を構想にとどめず、設計・試作品製作・製品製造に応用し始めた。

ソリューション

Conflux Technology 社は、工業用積層造形の業界動向を分析し、技術面の査定をおこなった結果、同社の目標を達成するために必要な技術面・営業面の能力をもつパートナー企業はEOS 社のみであるという結論に達した。Conflux Core TM の設計は、概念実証短期開発プログラムを経て特許を取得している。
わずか6 か月のあいだに6 つの試作品が製作され、最終成果物も開発できるようになった。この開発プログラムにおいてはいくつかのツールが利用されている。まず数値流体力学(CFD)によって、流れの視覚化を通じて熱交換器設計の反復が補完されるとともに、対比による性能予測が補完された。
また、熱力学的数値を扱う非線形の有限要素解析(FEA)を利用することで、成果物における変位や圧力を分析し、構造的な欠陥がないことを確かめている。
さらに、EOS 社の有する専用の積層造形ソフトウェア・ツールにより、データの前処理、工程の最適化、品質の保証が可能になった。
これらを利用して熱交換器Conflux Core TM は開発されており、現在では様々な業界(航空宇宙産業、自動車業界、石油・ガス業界、化学処理やマイクロプロセッサの冷却など)への応用が広がっている。

成果

熱交換器Conflux Core TM を、フォーミュラ・ワン(F1)のベンチマークと比較した。
Young Calibrations 社(英国認定機関[UKAS]の認定を受けた英国の研究機関)は、公認の較正サービスおよび熱流体・熱成分の試験サービスを手がけている企業であるが、今回Conflux 社の製品を試験した。試験結果(図1 参照)で明確になったのは、Conflux 社が3D プリントで製造した熱交換器でなしえた劇的な改善である。

3Dプリンターで製造した熱交換器の試験結果
                               図1

積層造形を用いることで同社は、単位体積あたりの表面積が劇的に増加するような、装置内部の幾何学的形状の設計に成功した。
これにより、排熱量を3 倍に増加させながら、圧力低下は3 分の2 も減少させているのである。さらに、積層造形を利用することで小型の新しい熱交換器設計が可能になっており、装置の長さはF1 のベンチマークに比べて55mm も短い。結果的に、熱 交換器の重量も22%削減できた。

積層造形によって得られる設計上の自由度によって、車体内部における配置の最適化が可能になるとともに、構成部品どうしを結合して部品の総数を減らすことにもつながる。
従属部品を1 個の部品に統合できれば、組み立てにかかる時間を短縮し、接合部の壊れやすい箇所も減らすことができる。
熱交換器Conflux Core TM が土台となって、Conflux Technology 社は、熱力学分野・流体力学分野の課題に取り組む積層造形の応用技術開発企業へと進化している。
だが、同社が多様な市場にまたがる顧客と開発パートナーを相手にするようになったため、同様にいろいろな課題にも直面している。同社には知的財産の拡大を促すR&D の情報ルートがあり、これが同社の価値ある提案の裏付けとなっている。
積層造形のノウハウを活かせる社内設計と、計算処理上のモデル化、EOS 社および同社による世界でも最先端のプラットフォーム技術との緊密な連携を組み合わせることで、技術面における成功を収めてきた。
Conflux Technology 社には、強力な熱流体ソリューションを創出するにあたり、積層造形が秘めた可能性を企業内で実現するための支援をしてくれる顧客や開発パートナーと協働できるという大きな強みがある。

会社概要

Conflux Technology 社は、熱力学分野・流体力学分野の課題に対するソリューション設計に取り組む、積層造形の応用技術開発企業である。
2017 年夏、AM Ventures 社が参加しConflux 社へ投資したことから、変革に拍車がかかり、この優れたチームとプロダクツの支援材料となっている。
詳しくは:www.confluxtechnology.com

会社概要​COMPANY

  • 会社情報​ABOUT US

    VISION:AMをものづくりのあたりまえに
    MISSION:AMの実践者であり先導者として、産業化されたAMプロセスを実現する

  • 製品・サービス​SOLUTION

    AM装置の販売からメンテナンス、受託生産、ソリューション開発に至るまで、
    AMに関するさまざまな事業を展開しています。