導入事例

ロケットエンジン開発にEOSの3Dプリンターを導入
最新国産ロケットに適用するAM技術

2021/01/28

AM装置導入事例

宇宙航空研究開発機構様、三菱重工業株式会社様

日本のロケット開発を推進してきた宇宙航空研究開発機構様(以下、JAXA)と三菱重工業株式会社様(以下、三菱重工)は、次世代の基幹ロケットであるH3ロケットの開発に取り組んでいます。

以下は弊社の前身であるNTTデータエンジニアリングシステムズ(以下、NDES)の季刊誌「人とシステム」2020年4月版に掲載した、三菱重工業株式会社 小河原様(図1)、平松様(図2)へのインタビュー記事からお二方の発言を抜粋したものです。






図1
小河原 彰 様

三菱重工業株式会社
防衛・宇宙セグメント
宇宙事業部
製造・発射整備部
主席技師

図2
平松 範之 様

三菱重工業株式会社
防衛・宇宙セグメント
材料技術開発課
プロセスチーム
主席チーム統括

(所属は2019 年3 月時点)

ロケットの製造と打ち上げを実施している三菱重工 防衛・宇宙セグメントの宇宙事業部では、ロケット本体やロケットの発射施設である地上設備、宇宙ステーション関連のモジュールの製造などを行っています。
その中でも名古屋誘導推進システム製作所では、H3ロケットに搭載されるLE-9エンジンの開発・製造を担当、NTTデータ ザムテクノロジーズ(旧NDES、以下XAM)のバックアップで導入したEOS社の3Dプリンターを使って、最新エンジンの部品を造形しています。装置の導入および部品の開発は図3に示す役割分担で実施されました。

図3 AM技術による部品製作の開発体制

 

最新ロケットのエンジン開発にAM技術を適用

現行の日本の基幹ロケットであるH-IIA、H-IIBは、世界的に見ても非常に信頼性の高いロケットです。一方で、世界各国においてグローバルなロケット関連ビジネスが急激に進展する中、対抗できる大型で打ち上げ能力の高い後継ロケットの登場が期待されています。そこで、最新の次世代ロケットとしてH3の開発が進められており、初号機が2021年以降に打ち上げられる予定です。(図4)

また、H3ロケットは、海外顧客の獲得が最重要課題で、打ち上げ技術の柔軟性、高信頼性、低価格の3つの実現を目指します。日本の技術で世界の宇宙輸送をリードしたいという願いが込められたH3ロケット。その主エンジンとなる第1段用エンジンLE-9(図5)の開発・製造で、EOSの3Dプリンターが活用されています。

図4 日本のロケットと第1段エンジンの推移
図5 H3ロケットのLE-9エンジン

三菱重工の宇宙事業部では、新しい技術としてAM技術に注目をして調べていく中で、適用に向いているロケットエンジンの部品から取り組みがスタート。現在、LE-9エンジンで三菱重工が担当する範囲の中でAM技術を適用しているのは、12コンポーネントの17部品に及びます。(図6)(機能を持った最小限の部品の固まりがコンポーネントで、1つのコンポーネントが複数の部品で構成されている。)

図6 AM技術を適用した部品(赤色部分)

これからの日本のロケット開発でも期待のAM技術

LE-9エンジンにAM技術を適用したのには、”低コストの実現”と“諸外国のロケットに対する競争力の強化”という2つのモチベーションがあります。諸外国ではAM技術をロケットエンジンに適用するための取り組みが進んでおり、海外と競合するにはAM技術を持っていることが必須の状況です。その実現に向けて、機械加工部品をAM技術の部品に置き換えるための研究開発をXAM(旧NDES)と一緒に取り組み、JAXA様に提案してきました。さらに大規模な研究がJAXA様/三菱重工/XAMにより実施され、成立性が十分あると判断された部品がLE-9に適用されています。中でも、噴射器とミキサー配管には、大きなメリットがありました。

LE-9の噴射器(図7)の役割は、燃焼室に液体水素と液体酸素を供給して混合させるもの。約500本のエレメントがあり、非常に小さな筒の真ん中を液体酸素が、二重円管の隙間を液体水素が流れます。従来の製造法では手間がかかるコンポーネントでしたが、3Dプリンターであればコアとなる部分を一体造形できます。これにより全体コストの50%以上を削減することができました。こうした複雑な形状の部品の方が、AM技術のメリットを発揮できることを実感しています。


もう1つのミキサー配管(図6)はシンプルな配管構造で、AM技術としての難易度は高くはありませんが、かなりのコストダウンを実現しました。1つの部品として一体化できたことで、質量やコストを削減。さらに、配管の肉厚を均等にすることも可能となりました。AM技術でコストダウンを図るだけでなく、部品としての信頼性、機能性も高めることができています。

図7 AM技術の適用部品
H3ロケットのLE-9エンジンの噴射機

AM技術が活躍する未来へ向けて

材料面でも、いろいろな規格が出てきている状況で、さまざまな材料の利用が進むことにより、さらに機能的に重要な部品作りにもAM技術が適用される可能性が増えています。注目している材料は銅とのこと。熱伝導が良い銅の中に液体水素を通して冷やすことで、高圧・高温にも耐えられる部品になります。銅は、鉄やニッケルでも溶けてしまう燃焼室などに使われており、AM技術による銅の活用を目指しています。

これからの宇宙開発でAM技術がさらに浸透するポイントについては、品質保証のための検査が挙げられます。
航空宇宙関連の部品に対する品質保証の考え方は、基本的に2つあります。
一つ目は、製品の品質は製品自体で確認することです。
二つ目は、難しい製造プロセスの場合、そのプロセス自体を管理することです。

難しい技術分野に入るAM技術は、製造プロセスを管理し、なおかつ製品自体もすべて検査する必要があります。製品検査には時間とコストを要しますし、検査できない場合は製造できても使えません。そのため、AM技術によって複雑で高機能な部品を作れるものの、検査できないことで適用を見合わせているものもあります。今後、造形過程を監視できる精密なインプロセスモニタリングが実現できれば、実物での検査が不要になるなど品質保証に対する考え方も変わり、AM技術の適用部品についても拡大すると期待されています。



会社プロフィール

会社名 三菱重工業株式会社
Webサイト https://www.mhi.com/jp/
住所 東京都千代田区丸の内三丁目2番3号
設立 1950年1月
資本金 2,656億円(2019年3月31日現在)
事業内容 パワー、インダストリー&社会基盤、航空・防衛・宇宙





名古屋誘導推進システム製作所


愛知県小牧市大字東田中1200番地
1972年 名古屋航空機製作所の小牧北工場として操業を開始。
1989年 独立して名古屋誘導推進システム製作所となる。

ソリューション紹介

三菱重工業株式会社様が導入している3Dプリンターは、EOSM400-4とEOSM290。

EOS M290
R&Dや小ロット生産に最適な金属積層造形のスタンダード


        
仕様
造形領域 250mm×250mm×325mm
積層厚※ 0.02mm~0.06mm
レーザータイプ Yb-fiber laser 400W
サイズ(W×D×H)
システム 2,500mm×1,300mm×2,190mm
再循環フィルタシステム
プレフィルター 930mm×954mm×1,710mm
ファインフィルター 781mm×818mm×1,448mm
重量 約1,710kg

EOS M400-4
大型化と生産性の向上を実現した量産用システム


     
仕様
造形領域 400mm×400mm×400mm
積層厚※ 0.04mm(デフォルト値、変更可能)
レーザータイプ Yb-fiber laser 400W×4
サイズ(W×D×H)
システム 4,181mm×1,613mm×2,355mm
重量 約4,835kg

※材料によって異なります

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