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2026.10.05

3Dプリンター導入とビジネスの高度化

 前回の「グローバルなトレンド、3Dプリンターの大型化」で、簡単に紹介しましたが、現在3Dプリンターの導入を牽引する適用分野は、宇宙・航空・防衛分野です。そしてどのような部品に対してメリットが得られるかというと、溶接の多い部品です。ここではそのことを念頭に3Dプリンターを導入するということについて、もう少し踏み込んで考えてみようと思います。

3Dプリンターの導入

あなたのお客様がどんな悩みを抱えているか、まずはそこを考えてみます。もちろんあなたの会社で困っていることにアプローチする方法もありますが、ここではあなたの会社の製品を購入するお客様がどんな課題を抱えているか、という視点で始めてみたいと思います。お客様へ提供する部品にどう付加価値をつけて、ビジネスを高度化するかという考え方です。
宇宙・航空・防衛産業を担う大手企業の課題には、①部品点数削減、②軽量化、③短納期、④国内調達比率の向上などがあります。

① 部品点数削減

宇宙・航空・防衛産業は、少量生産、厳格な品質管理、そして信頼性が求められる業界です。部品点数が多いということは、組み立て工数が多く、不具合の起きるリスクが高くなります。また、品質検査の回数も増えるため、部品の価格が高くなります。発注側の大手企業にとっては、組み立てを行う数多くのサプライヤーを管理する人的コストも無視できません。

② 軽量化

宇宙産業では1㎏軽くなるだけで、打ち上げコストが大幅に削減できると言われています。さらに軽くなればペイロードが増加します。防衛分野でも機動性の向上や燃費の削減など、運用コストの削減につながります。

③ 短納期

もともと、宇宙・防衛産業は国家主導のため、開発期間が長かったのですが、小型衛星が民間主導で開発され始め、スピードが求められるようになりました。これまでは、計画確定以後の変更ができない、失敗の許されないものでした。しかし、民間の小型衛星では、短期間に多く打ち上げ、失敗を繰り返し改善しつつ、完成させるという流れにもなっています。また、有事の際は短期間に武器や装備を準備する必要があります。

④ 国内調達比率の向上

海外拠点の企業に依存していたとして、もし輸送経路の途中で紛争が起きた場合、政治的関係が悪化したり、相手国の政策が変更した場合、供給が止まる可能性があります。そして、供給が止まった場合、代替先を見つけることが様々な理由により非常に困難です。宇宙・防衛にとって、サプライチェーンそのものが兵站であると言えます。国内で必要な技術や製造については、有事でも継続生産できることが必要であり、自立性が重要になります。

さて、視点をお客様の困りごとから、あなたの会社がL-PBF方式の3Dプリンター導入を通して提案できることに切り替えてみます。L-PBF方式を導入することで、組み立て工数の削減が提案できるようになります。組み立て工数を削減するということは、部品統合や機能統合が発生していることを意味し、それはトポロジー最適化を含めた再設計を伴います。設計から提案できれば、強力な技術パートナーになれるのではないでしょうか。

試作のイメージ(Source:EOS)
AMでは、データを作成あるいは変更し、必要なタイミングで試作ができます。さらに、あまり大きくないものであれば、1回の造形で何バージョンもの試作が可能なため、最適な設計を探るのも時間が短縮でき、開発から製造までの時間短縮が提案できます。

L-PBF方式は少量多品種の製造に適した技術で、特に宇宙・航空・防衛産業に向いていると言えます。試作・製造段階で金型が不要になれば、金型の製作費用がなくなるだけでなく、メンテナンスや保管の必要もなくなるため、コスト削減にもつながります。また、デジタルで在庫を持つことができるので、金型の保管にかかるコストの削減をお客様に提案できます。加えて金型のない昔の部品のリバースエンジニアリングや、製造の終わってしまった部品の供給を小ロットから行う事も提案できます。

ビジネスの高度化

現実的な話をすると、宇宙・航空・防衛産業で通用する品質保証、認証の取得、技術者の育成、その他に(直接3Dプリンターとは関係ありませんが)、設計データの開示などが障壁となるでしょう。これまでの「3Dプリンター導入で直面する課題とは」と「グローバルなトレンド、3Dプリンターの大型化」で紹介しましたが、3Dプリンター導入の際には、モニタリング機能や支援サービスなどの利用を検討するのも手段の一つです。

重要なのは、既存の工法を3Dプリンターでの製造に置き換えるという考え方ではなく、お互いの得意なところを使い分けて、より高付加価値な部品を作るという考え方です。部品点数を削減し機能統合することで、高単価の部品を販売できる可能性もでてきます。
コストが高くては意味がないと思うかもしれませんが、部品点数の削減でお客様側のサプライチェーンがシンプルになれば、今までかかっていた管理コスト、組み立てコスト、そして、検査回数が減ることにより、全体にかかるコストは削減され、さらに品質が向上するメリットが得られます。高単価になった場合でも、コスト削減によってその分を吸収することができる可能性があります。ここに高い部品を買う価値がでてくるのです。

もちろん、L-PBF方式の3Dプリンターで製造することに向く部品と向かない部品があります。何でもというわけにはいきません。いくつかL-PBF方式に向いた例をあげると、ブラケット類、ハウジング、燃焼器周辺の部品、熱交換器などがあります。まずは少量でもいいので、部品を選定し、現状の原価、3Dプリンター製造に置き換えた時の差分、投資額と回収年数を考えてみると、導入後の効果をシミュレーションできて良いかもしれません。

文中のワードについて。

「L-PBF方式」とは、産業用3Dプリンターで最も一般的なLaser Powder Bed Fusion(粉末床溶融結合法)とよばれる技術で、材料となる金属や樹脂の粉末をレーザーで溶融させる、溶接技術の一種です。

「AM技術」とは、Additive Manufacturing(アディティブ・マニュファクチャリング)の略で、3Dプリンティング技術を意味します。

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