ソリューション統括部の西峰です。
きょうの話題は、植物の生長戦略としての「植物の大好きな数字」の話から始め、この考え方が、金属造形機の照射ストラテジーでも活用されているという構成でまとめたいと思います。
下の写真は、タンポポ(西洋タンポポかもしれない)の葉ですが、この葉っぱの生え方を昔の偉い人(ユークリッド)が解明しています。
最初の葉と2枚目の葉の関係は、1/2回転の関係で、3枚目は2/3回転、4枚目は3/5回転、次からは、5/8、8/13、13/21、21/34、34/55・・・・≒0.6180339887回転≒222.5°。
この奇妙な数字は、黄金率φと呼ばれていて、φ:1=1:1+φという関係にありますので、厳密解は、1・1=φ・(1+φ)→φ2+φ‐1=0の解です。
また、上述の分数の数列で割り算記号の’/’を消して、重なった数字を省くと、1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,…はフィボナッチ数列と言って、次々に前2つの数字を足したものです。
興味のある方は、一度ググってみて下さい。
さて、本題のなぜ食物がこの数字が好きか?という話にもどります。
植物はご存じのとおり、光を受けて光合成しないと生きて行けません。
つまり、限られたエリアでなるべくたくさんの光を浴びたいので、自分自身の葉で光を遮らないようにしなければなりません。
もうお分かりかもしれませんが、この角度の秘密は、最も重なりにくくバランスが良い角度という特徴があるのです。
下の図1は、45度ずつ回転しながら螺旋状に100個の点を置いたもので、図2は、その角度を222.5度ずつに変更したものです。
見事にバラけていますよね。ひまわりの種もこれに近い形で一つ一つの種が最も成長しやすくなっている様です。
ここで軽く中まとめです。植物の生長戦略は、「最もバランスよくバラける。その為の角度が360°×0.6180339887≒222.5度」というのがポイントで、植物が愛する数字というよりは、この数字を好む植物がより生き残り安かったということですね。
さて、話題は3Dプリンターに移ります。
EOS社が採用しているLaserPowderBedFusiin:LPBFと呼ばれる造形方法では、造形したいモデルをZ軸方向に10μm~100μm程の間隔でスライスして、1層ごとの断面形状をレーザーで塗りつぶして溶融凝固させることを繰り返して立体形状を形成します。
図3は、断面一層分のレーザー軌跡を表していますが、ソリッド部分は緑で示したようなハッチで塗りつぶします。
結論から言うとこのハッチの角度を「バランスよくバラけさせたい」ということです。
もともと金属造形の可否は、造形中の熱応力で発生する反りをどう抑えるかの闘いですが、このハッチ角度が偏ると反りの要因となることが知られていて、図4のように1層ごとに角度を変更しています。
(回転角度は歪みだけでなく、緻密度や金属組織の方位にも影響を与えます)
ただし、ハッチの場合は、回転軸に対して対象なので、360°を均等分割するのではなく180°を均等分割すればよいので、角度は、180°×0.6180339887≒111.25°となり、鋭角の方で表現すると68.75°という値が最も「バランスよくバラつく」角度となります。
この角度は、黄金律を前出数列の5/8で近似した時にほぼ近くなる(67.5°)ことから、EOS社製の造形機の標準回転角度もこの辺りを意識しているというのが明察かと考えています。