「私たちが住む太陽系は、どのように生まれたのだろう?」
「生命の材料は、地球以外の場所にも存在しているのだろうか?」
そのような疑問に最前線で挑戦し続ける『アルマ望遠鏡』。
南米チリ共和国の標高5,000mの高地に建設され、2011年に科学観測を開始した巨大電波望遠鏡です。
出所:アルマ望遠鏡とは – アルマ望遠鏡 (alma-telescope.jp)
今回、国立天文台様には、弊社が取り扱うEOS社の金属3DプリンタM290をご導入いただき、
『アルマ望遠鏡』に使用されるコルゲートホーンを造形いただきました。
課題
コルゲートホーンは、パラボラアンテナによって集光された天体からの電磁波を受信機上で最初に受信し、
後段に設置された検出器へ電磁波を集光する役割を果たしています。観測装置に使用される部品は、
観測する目的により異なり、且つ特殊なため、決して大量に生産されるものではありません。
市販品のようなライン製造も難しく、コルゲートホーンの場合、従来は電鋳や切削での部品製作が主流でした。
しかしどうしてもコストやリードタイムが高まってしまうという課題がありました。
ソリューション
そのような中で国立天文台様が着目した技術が金属3Dプリンタによる造形。
金属3Dプリンタは、設計の自由度を高め、従来工法では実現が難しい形状を実現できる点や、
解析・製作・評価といった開発サイクルを高めることができる点、在庫を現物として保管しておかずとも、
データがあれば短期間で同じ部品が造形できるという点がメリットとして考えられております。
国立天文台様にも、このようなメリットに着目いただき、2019年にEOS社の金属3Dプリンタをご導入いただきました。
今回、国立天文台様が製作されたコルゲートホーンは、
アルマ望遠鏡の中で最も低い周波数帯を観測するBand1受信機(観測周波数35-50GHz)に搭載します。
製作にあたっては造形条件の試行錯誤はもとより、受信機運用時の温度(-258℃)に対応するための、
常温および低温での材料の物性評価や、電波アンテナとしての性能評価等、多岐にわたる取り組みを進めていただき、
約2年の開発期間を経て、実際に最終製品として使用できるコルゲートホーンを造形いただきました。
製作されたコルゲートホーンは、2022年10月現在、受信機開発主担当である台湾中央研究院天文及天文物理研究所
(ASIAA : Academia Sinica Institute of Astronomy and Astrophysics)で受信機に搭載され、最終性能評価が進んでいる段階です。
今後数カ月のうちに、チリのアルマサイトへ輸送される予定とお伺いしております。
成果
また、今回のプロジェクトにおいては、切削加工を前提とした既存の設計から変更は加えず、切削加工と同品質のコルゲートホーンが造形できることを検証いただきました。一方で、金属3Dプリンタのメリットである、『従来工法では難しい形状の実現による機能性向上』を目論み、更なる開発を進めていきたいとのお話をいただいております。
今後、金属3Dプリンタで造形された部品の適用が更に広がり、この技術が天文学の発展のための一助となることを期待しています。
また、今回の取り組みは国立天文台様のホームページにも掲載していただいておりますので、是非そちらもご覧ください。
プレスリリース – 金属3Dプリンタを用いた、初の電波天文用の受信機部品の製作に成功 (国立天文台様)
– 金属3Dプリンタで製作された初の電波天文用極低温受信機部品 (アルマ望遠鏡様)
3Dプリンタは、設計の自由度を大幅に拡大することや、試行期間を大幅に短縮することができる技術です。
大きな可能性を持ったこの3Dプリンタ技術が、「ものづくりのあたりまえ」になっていく世界を実現するために、
私たちNTTデータ ザムテクノロジーズは絶えず挑戦し続けていきます。
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