
AMCM社はEOS製の金属・樹脂3Dプリンターをカスタマイズする3Dプリンターのメーカーで、ドイツ・EOS社のグループ会社です。
レーザーの種類・出力・本数や、造形領域、ヒーティング温度、造形雰囲気など、お客様それぞれの用途に適したカスタマイズを承っております。
ここでは、AMCM社についてとカスタマイズの一例をご紹介いたします。
※本記事は、2024年2月1日に開催されたTCT Japan 2024 Introducing Stageでの講演をもとに構成しています。
目次
AMCMについて

AMCMという社名は、Additive Manufacturing Customized Machineの頭文字が由来となっており、EOSの3Dプリンターをお客様に合わせてカスタマイズする会社です。
EOSの開発・製造ラインではお客様それぞれのご要望に個別に対応することが難しいため、お客様の用途に合わせたチューニングやカスタマイズをAMCMが担当します。
2017年の設立以降、AMCMが手掛けた樹脂・金属3Dプリンターは、世界中で約120台の販売実績がございます。(2024年1月時点)
AMCM社は、レーザーの会社であるBaasel Lasertech出身者と製造業向け3DプリンターのパイオニアであるEOS出身者とで構成されています。
そのため、EOS3Dプリンターのリードエンジニアはもちろん、レーザーや光学部品の製造において数十年の経験があるエキスパートが多数在籍している、技術主導型の企業です。
2017 | AMCM設立 |
2018 | 高さ1mの金属AM造形を確立(世界初) |
2019 | 銅合金CuCrZrで1mサイズの造形を確立 |
2020 | 1台目となるAMCM M290-2 FDRとAMCM M 4Kを納品 |
2021 | AMCM M 4Kを10台納品 |
2022 | AMCM M 8Kプロジェクトが発足 |
2023 | n-LIGHTレーザーを搭載したAMCM M290 FLXを発表 |
AMCMの特徴

AMCMでは、短納期で提供可能な「チューニング」と、大幅な改造を行う「カスタマイズ」の両方を実施しています。
チューニングでは、EOSの標準機よりもレーザー出力を強めるなどの調整を行います。3Dプリンターの外見はEOSの3Dプリンターと非常に似た仕上がりとなります。
一方、カスタマイズではチューニングよりも多くの箇所に改造を施す「特注生産」となるため、3Dプリンターの見た目もEOSとは違うものになります。
現在、チューニングとカスタマイズのシェア比率はほぼ半々となっています。
販売実績

2024年1月現在、世界中で約120台の3Dプリンターを販売しています。
地域別の内訳としては北米40台、ヨーロッパ57台、アジア19台、オーストラリア2台となります。
主に金属3Dプリンターのカスタマイズを行っておりますが、樹脂3Dプリンターのカスタマイズも実績がございます。
(AMCMにはEOS樹脂3Dプリンターのリードエンジニアも在籍しています。)
AMCM製3Dプリンターのご紹介
ここからは製品ラインナップの一部をご紹介します。
ご紹介するものはあくまでカスタマイズの一例です。皆様のご希望に沿ったカスタマイズが可能です。
AMCM M 290-2 FDR

M290よりも微細な造形ができるFDR技術を搭載し、より肉薄で細かな形状の再現を可能にしたモデル
FDRはFine Detail Resolutionの略で、微細な形状を高品質に造形できる技術です。
特徴:
- 40μmのスポット径で板厚100μmの造形
- デュアルレーザーで生産性が向上
- 光学系や冷却機能の改善による高品質な造形
アプリケーション例:
- X線グリッド(散乱X線除去用グリッド/ anti-scatter grid)
CT機器に必要となる散乱線除去グリッドは、AMで製造することで少ないX線量で解像度の高い撮影が可能となるため、患者側へのメリットが非常に大きくなります。
このアプリケーションで、15台のAMCM M290-2 FDRが導入されています。

こちらのグリッドはタングステンで造形されていますが、この3DプリンターではSUS316L(ステンレス鋼)やチタン、コバルトクロムなどの造形が可能です。
AMCM M 290-2 1kW

1kWレーザーを2本搭載し、生産性もアップ。純銅の造形にも対応し、M290よりも幅広い材料が利用できるモデル
特徴:
- 純銅やアルミニウムなどの高伝導な材料の造形に最適な出力
- デュアルレーザーで生産性が向上
- M290と同じスポット径
- 高出力レーザーに対応した冷却機能とガスフロー
EOS M 290と同じスポット径なので、既にM 290をご利用のユーザー様は今までの経験を無駄にすることなく活用できます。
レーザーを2本搭載したことで生産性が向上し、部品当たりのコストの削減が可能です。
出力の高いレーザーを搭載しているため、冷却機能とガスフローを改善しています。
出力370Wでステンレス鋼の造形を行い、その翌週に900W×2本のレーザーでアルミニウムの造形を行っているお客様もいらっしゃいます。非常に柔軟性の高いシステムです。
AMCM M 290-2 FLX

大小さまざまなビーム形状に切り替えることができる、フレキシブルなモデル
FLXはnLIGHTレーザーを利用したフレキシブルシリーズです。
特徴:
- 85μm~210μmまでビーム形状を可変でき、品質と生産性が向上
- ビーム形状の切り替えはわずか30ミリ秒以下
- ビーム形状の可変による入熱コントロールと面粗度の改善
- デュアルレーザーによるプレ・ポストヒーティング
照射面積が大きい場合は一気に塗りつぶせる大きいビーム形状、輪郭(コントゥアー)や細かい形状には小さいビーム形状といった切り替えが可能で、生産性が大幅に向上できるシステムです。

また、フルフィールド・オーバーラップでの照射が可能です。そのため、2本のレーザーに異なる照射設定と遅延時間を設定し、同じ軌跡を追いかけることで、レーザーによるプレ・ポストヒーティングが可能になります。

その他、M 290シリーズへのオプション
造形エリアの縮小

特徴:
- 造形エリアはΦ100 mm、Z=100 mm
- 500℃のヒーティングが可能
- 取り付け/取り外しが可能(サービスエンジニアが対応)
充填する粉末が少量で済むため、少量造形に最適なオプションです。
ヒーティング機能の追加

特徴:
- 造形エリアは xyz 220×220×240 mm
- 造形プラットフォームのヒーティング温度は500℃
- 永久的なオプションのため、取り外しは不可
500℃で利用する場合は、角の方が500℃に達しにくいため、推奨する造形エリアはxy 220×220 mmとなります。500℃以上のオプション実績もありますため、もっと高い温度を必要とする場合は当社までお声がけください。
ガス浄化システム

特徴:
- 酸素と湿気を除去
- 酸素濃度 50ppm以下の環境
- 24時間365日の稼働
高温のプロセスで造形する場合、酸素を排除しないと粉末に影響を及ぼす可能性があります。
このオプションではプロセスガスを精製して湿気を取り除くことで、50ppm以下の環境下で部品を造形できます。
アップグレードという形で後付けが可能なため、研究開発用途での導入が多いオプションです。
AMCM M450-4

EOS最大のM400-4の造形領域を更に拡大。4本レーザーで生産性を高めながら、より大型な部品を造形可能にしたモデル
特徴
- 生産性が向上するnLIGHTレーザーの選択が可能
- 光学部品の冷却を最適化
- 24時間365日 粉末の連続供給が可能
既にM 400-4をご利用のユーザー様は、今までの経験を無駄にすることなく活用できます。
レーザーの出力は400W, 1kW, 1.2kWから選ぶことができます。
アプリケーション例:
- ロケットエンジン燃焼室
スペクトラム・ロケットの燃焼室に利用されています。AMのメリットを最大限に活かし、複数の部品を一体化で造形したことで、たった2つの部品で構成することができました。
AMCM M 4K

高さ方向の造形領域は1,000mm。「もっと大きな部品を作りたい」を叶えるモデル
特徴:
- 造形エリアは xyz 450×450×1,000mm
- 1kWもしくは1.2kWレーザー(nLIGHT)4本の搭載が可能
- 4本のレーザーが同時稼働
- パウダーハンドリングのオプション有り
1mの大型部品の造形が可能で、4本レーザーにより生産性の高さも同時に実現します。
パウダーハンドリングのオプションも用意しており、長時間の造形でも粉末の補充で3Dプリンターを止める必要がありません。
ディスペンサー内の粉末が少し減ると、自動的に補充される仕組みになっています。
AMCM M 8K

最大8本のレーザーを搭載した、世界最大サイズの造形を叶えるモデル
特徴:
- 造形エリアは xyz 800×800×1,200mm (オプションで1,000×1,000×1,600mmも可能)
- 出力は400W, 1kW, 1.2kW(nLIGHT)から選択可能
- レーザーは最大8本
AMCMは欧州連合(EU)からの資金提供を受け、この大型金属3Dプリンターの開発を進めています。
2024年内に日本でも販売開始となる予定です。
最後に
AMCMは、お客様によるオーダードリブンな開発を行っております。
標準化された3Dプリンターではニーズを満たせないお客様がいらっしゃいましたら、当社までお声がけください。