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AM四方山話 #8 金属材料とTRL

2021/06/08

アプリケーション開発・受託製造 技術コラム

>>前回のお話『#7 PBFと粉末材料』はこちら

材料の開発

 皆さんはTRLという言葉をご存じでしょうか?

技術成熟度レベル(Technology Readiness Level、TRL)のことで、新技術の開発のレベルを評価するための基準です。1974年にNASAによって提唱されました。全部で9段階あり、ウィキペディアによるとTRL1は基礎理論の着想段階、TRL9が最終段階、実運用となっており、性能保証ができる完成した製品になっているということですね。EOSではこの概念を材料にも適用しています。

粉末床溶融結合(Powder Bed Fusion、PBF)に使える材料を開発するには非常に多くの時間が必要となります。金属の場合、ターゲットとなる金属の粉末の生成に始まり、その粉末層を実用的な密度で溶融再凝固させて、なおかつ収縮による反りを抑え、材料の持つ機械的性能を達成させることが必要となります。その過程で最も時間のかかる部分が造形パラメータの探索ということになります。

パラメータといってもレーザパワー、スキャン速度、スキャン密度、スキャンストラテジー、造形雰囲気、温度等々、EOSの装置は250種ほどのパラメータがあります。

積層厚や材料の粒度分布などが変われば溶融再凝固の挙動も全く違ったものになるので、周到な開発計画と膨大な数のトライ・アンド・エラーが必要となります。

したがってこの材料開発、即ちパラメータ探索という作業は何年にもわたることもあります。開発が完了すれば、材料とそれを造形するためのパラメータのセットとしてリリースされます。

新しい材料へのニーズ

 開発に時間がかかる一方で、航空宇宙、タービン、EV、医療など様々な分野で新しい材料への要求がますます高まっています。

これらの要求に対して開発が完了するまで材料のリリースを控えるというのは、ユーザーにとってもメーカーにとっても大きな機会損失なると考えたのでしょうか。最近EOS はTRL3 ~ TRL6 の開発途上の材料をCore プロダクトとしてTRLを明記したうえでリリースしています。

開発中の材料なので誰でもが簡単に購入できてそのまま問題なく使えるというものではありませんが、ターゲットとするアプリケーションに使えるような新しい材料をいち早くトライできるというのは大きなメリットであり、材料開発の期間短縮にも貢献するのではないかと思います。

今後、いろんなテーマでユーザーと協働での開発が活発になるような予感がします。

次回、『STLデータについて』>>こちら


著者紹介

前田 寿彦/ Toshihiko MAEDA




略歴

1952年 大阪生まれ

1977年 大阪府立大学大学院工学研究科船舶工学 修士課程修了

1978年 日立造船情報システム(株)入社

1991年 海外事業部部長

1993年 独EOS社と積層造形装置の日本国内における独占販売契約締結。

     以後、EOS社の積層造形装置の事業推進に従事し、現在に至る。

2021年 2月1日現在

    (株)NTTデータ ザムテクノロジーズ ソリューション統括部 技術部

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