現在、EOS社の中型サイズの造形機はM250、M270、M280、M290と進化しています。
私は、M270の後期型からこの金属AM(金属3Dプリンター)に魅了された一人でした。約30cm四方の窓から、レーザーが火花を飛ばしながら金属粉末を溶かしていく様を見たときに、ロマンを感じました。そして造形が終了して造形物を取り出したとき、なんだかよく分からない形でしたが、感動したことを今でも覚えています。
それから、金属AMのアプリケーションエンジニアとして造形機に携わるようになり、M270を使って造形することになりました。当時(2010年)は、まだ金属AMは知る人ぞ知るみたいな状況でしたので、造形を依頼して下さるお客様もいなく、最初は指輪等を造形してAM特有のデザインルールを勉強し、造形時間が短い形状を多く造形していました。 ※今でも当時造形した指輪は身に着けています。
そんな中、あるお客様から100時間を超える造形依頼がありました。 その依頼を受け、指輪造形で培った知識で造形を開始しました。しかし造形開始から3日目に、造形ジャムが発生して造形が途中で止まってしまいました。
原因は、光学系のレンズがヒュームにより汚れ、本来のエネルギーを粉末に与えることができずに溶融不足となり、材料を散布するX軸と造形物が接触したことで、材料の散布ができずにエラーで停止するといった現象です。当時はこれを回避するために、長時間の造形の時は途中で一旦停止し、レンズを清掃するしかないと教えられました。
当時は長時間の造形でレンズが汚れるのは当たり前であり、長時間造形は途中で造形を一旦停止して、レンズを清掃して再開することが正しい手順と思っていました。そんな中、M280が登場し、その進化の具合に驚きを隠せませんでした。M280には照射面の近くに排出・吸引口があります。この新しいガスフローの構造のおかげで、レーザー照射にて発生したヒュームの上昇を防ぐことができます。結果、例え100時間を超える造形でもレンズが汚れるということはなくなりました。 M290になっても、M280のフローと基本設計は変わっておらず、300時間を超える造形でもレンズが汚れて造形が停止するということは無くなりました。