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2024.08.05

A20Xによる積層造形の開発【EOS 金属3Dプリンター】

 Aeromet社のA20X合金(A205合金)は高強度アルミニウムとして注目を集めています。組成的にはA201合金(アルミニウム銅合金)に近いですが、TiB2(ホウ化チタニウム)を添加しているという特徴があります。TiB2は融点が2900℃のため、造形中に無数のTiB2を核として結晶成長が行われるため微細化の実現ができます。そのためA201合金はレーザー積層造形の過程でクラックが形成されますが、A20X合金は造形過程で等軸微細な組織形成をするため、凝固割れが生じないと考えられます。今回は、A20X合金の積層造形の可能性を調査しました。

図1にA20X粉末のSEM画像を示します。ホウ素は軽い元素のためEDXでは分析できませんが、粉末の中で銅のネットワークが形成されていることが分かります。

(EDX:Energy dispersive X-ray spectroscopy 、エネルギー分散型線分析
 SEM:Scanning Electron Microscope、走査電子顯微鏡)
図1.A20X(A205)粉末のSEM画像
 図2は1.5cmのキューブ状の試験片XY・Z断面の研磨後の画像です。当社で造形パラメータを開発した結果、未溶融やクラックなどの欠陥は存在せず緻密に造形されていました。レーザー痕とメルトプールにおいては縦・横断面で異なる模様を描いています。
図.2 A20X(A205)積層造形体の縦・横断面写真
 図3は造形まま材のZ方向のEBSD解析結果です。造形方向に関わらず微細な結晶粒を形成しています。一般的に、積層造形合金では柱状晶が熱勾配によりZ方向に形成されますが、先述したようにTiB2を核として結晶成長が進むため熱勾配による結晶成長ができなくなっていると推測されます。またこのような微細組織を形成することで、A201で起こるような凝固割れが回避できていると推測されます。

(EBSD解析:Electron Back Scattered Diffraction Pattern、電子線後方散乱方位解析)
図3.造形まま材のEBSD解析結果
図4に溶体化処理後のEBSD解析結果を示します。溶体化処理後では造形ままと比較すると結晶粒が粗大していますが、依然として微細な等軸結晶粒です。造形ままの平均結晶粒は2.1㎛、溶体処理後材では6.3㎛でした。溶体化処理後に時効処理をおこなった造形体の室温における機械的特性が、Aeromet社の開示データと同程度であるため、高温時でも同様の特性が得られると考えられます。
図4.溶体化処理後のEBSD解析結果
(Al-Cu合金:アルミニウム銅合金、B:ホウ素、Ti:チタン、Cu:銅、TiB2:ホウ化チタニウム)

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